お母さんと息子4
正人さんは夜遅く帰ったり、バイクに乗ったりしては喧嘩して両親を泣かせたものでした。そんなある日のことです。
「正人、もう12時よ。何してたのッ?」
「うるせえなぁ」
「ち、ちょっとあんた怪我してるじゃない、額から血が出てるわよ」
「バイクで転んだんだよ」
「またケンカね」
「うるせえな」
「正人、お願いだからヤケを起こさないで。あんた、そんな子じゃなかったでしょッ?」
「フン、どうせ俺は養子だからな」
「あんた養子、養子ってね、そんなに養子が嫌だったらさっさと出て行けばいいじゃないのッ!さ、出て行きなさいよッ!そんな勇気も持てないの」
「さ、さわるんじゃねえよッ!」
「あッ!」
思わず、お母さんを突き飛ばしてしまった正人さんでした。
「チッ、おもしろくねえや」
「どこ行くのッ?」
「バイクに決まってんだろ」
「お母さんの顔見て、ちゃんとしゃべりなさいッ」
「うるせえんだよッ」
自分の気持ちを自分で抑えることができなかったあの頃。でも、お母さんは、そんな正人さんを決して見捨てはしませんでした。
それからもかわらず、やさしい母親であり続けてくれたために、だんだん正人さんはもとの素直な自分にもどることができたのでした。
お母さんはやがて認知症を患い、亡くなりました。そのあとを追うようにお父さんもまた病気でなくなりました。
今、正人さんは2児の親となり子育てや家庭をつくる大変さに躍起になっています。
子供を苦労して育てた両親の凄さとありがたさをしみじみと感じている日々を送っています。