お母さんと息子1
自分の親が実の親じゃなかったと知ったとき。人はどんな悲しい思いをするのでしょうか。私のまわりにも養子の関係の親子がいます。
やっぱり子どものころはしらされず、よけいなだれかがそれを知らせてしまうんですよね。でも、そこにはだれも立ち入ることはできません。
親子でそれを乗り越えていくしかないのでしょう。実際にどんなに親子がもめても、だれかが間に入ってどうのこうのなんて話は、私のまわりでは耳にしたことがありません。
そっと見守るしかないんですよね。
正人さん(仮名)もまた、10年ほど前にそういうことを知らなければならないときがやってきました。そんなお話です。
正人さんが高校生の時のことです。正人さんはバイクの免許を取るため、区役所へ戸籍抄本を取りに行きました。
「はい、こちらが戸籍抄本になります」
「はい、ありがとうございます」
受け取って戸籍抄本を見ると、そこにあったのは自分が養子だと書かれた文字。
「これはなんだ?…」
初めて見たとき、ショックの大きさでなにも考えられなかったそうです。でも、だんだんこれが現実だということに彼は気づいていきました。
そして、家に帰ると、お母さんが出迎えてくれました。
「ただいま」
「おかえり、正人」
「今日、オレが区役所へ戸籍抄本を取りに行くって知ってただろ?」
「ええ…」