六本木で時計が3
「トモちゃんは何て言ってんだよ?」
「たぶん、その店には何人かの外国人の人たちがいたから、彼らじゃないかって」
「ほら見ろ、そんなとこ行くからだよ!」
「でも、みんな留学生みたいだったし、店の人とも知り合いみたいで、へんな感じじゃなかったんだもん」
「留学生かあ、いいヤツばっかりとは限らないからなあ」
「日本語を勉強してる学生よ。でもその人たちとっても感じのいい人だったのよ」
「私が泥棒ですって顔してる泥棒がいるのか?怪しいぞ」
「そういう色眼鏡で見るの、やめてよ」
「警察には届けたのか?」
「届けてない。だって、出てくるとも思えないし」
「でも、質屋とか持ち込んだらすぐにわかるだろ」
「そうか。じゃ、届けてみようかなあ」
「まあ、時計ひとつで捜査なんかしてくれないけどなあ」
「そうよねえ…」
「あーあ…」
お父さんが落胆するのも当然の話でした。佳代子さんは悪いことしたなあ…と、しばらくお父さんの顔を見ることができませんでした。
お父さんは お父さんで、こんなことを考えていました。
もう1回買ってやろうかなあ…あんなにがっかりしてるんじゃ、かわいそうだし。でも、安易に買ってやるのも本人にとってよくないし、ここはしばらく反省させてから、もう一度買ってやるのもいいかもしれないなあ。