六本木で時計が2
ドン、とテーブルを叩いて怒るお父さん。
「どこだッ?どこで盗まれたんだッ?」
「六本木のショットバー」
「な、なんだ。そのチョットバーってのは?」
「ショットバーだよ。お父さん、いったことないの?」
「ああ、ショットバーね。ショットのバーだろ」
「知らないくせに。ウィスキーやカクテルを一杯ずつ買って飲むようなオシャレな店だよ」
「何がオシャレだよッ!時計なんかを盗むようなゴロツキやチンピラの溜まり場だろうが。そんなくだらん場所に出入りするからバカ見るんだよッ!」
「そんな言い方よしてよ。くだらない場所じゃないわよ。ゴロツキやチンピラの溜まり場でもないし」
「六本木なんてそんなところだろ!」
「もう東京ぜんぜん知らないんだから。かんべんしてよ」
「うるさい!だから、なんで盗まれたんだ?!」
「私、飲んだり食べたりする時って時計外す癖があるのよ」
「バカだな、お前は!」
「いちいち頭ごなしに怒鳴らないでよッ」
相当ムスッとしているお父さん。まだ腹の虫がおさまりません。
「で、盗んだヤツの見当はついてるのかッ?」
「わからないわよ」
「お前、まさか一人でそんな店行ったんじゃないだろうな」
「トモちゃんと一緒よ」
「女の子ふたりでそんな場所行くんじゃないよ!」
「いいじゃないの、たまには。それにトモちゃんの誕生日だったんだし」