ヤエヤマヒメウツギがしげしげ~

ヤエヤマヒメウツギがしげしげ~です。

六本木で時計が1

「この店じゃなきゃダメなのか、佳代子(仮名)?」
「ここがオシャレなのよ、お父さん!」


「うわっ、けっこう高いじゃないかよ。おい、こっちの棚がいいんじゃないの?」
「ダメダメ、奥の棚を見るの!ここまできてこまかいこと言わないの!買ってくれるんでしょ?」


成人式の時、父が記念に時計を買ってくれるというので、ここは思い切って甘えて高価な時計を買ってもらった佳代子さん。その三ヶ月後のことでした。


「お父さん、コーヒー入ったわよ」
「お、ありがとう」


「砂糖ひとつだね」
「ああ…あれ?おい、佳代子。お前、時計どうしたんだよ、最近してないけど」
「あッ…それが」


ドキッとする佳代子さん。カンのいいお父さんが追求します。


「まさか失くしたんじゃないだろうな」
「お父さんゴメンなさいッ!ホントごめんッ!」


「失くしたのかッ?」
「うん」


「なんだとお前この野郎!お父さんが汗水流して働いてやっともらった給料で、高い、高い時計を買ってやったっていうのにッ!」
「そんな高いを連発しなくても…」


「うるさいッ!いったいどうしたっていうんだッ?!どこでなくしたんだよ!」
「実は…盗まれたの」
「盗まれたァ?!」


お父さんが怒るのも無理はありませんでした。佳代子さんも大事にしていた時計だったのに。